【高山植物型】
 今までお話しした果実や種の移動は、一回で数メートルから数キロ程度。例えばアリによって種がはこばれるカンアオイの場合一回の移動距離が1メートルと考えると「1キロメートル分布するのに1千年」かかることになります。大昔、氷河期の前後にかけて、植物は日本列島を北から南へ。南から北へとゆっくりと大移動を繰り返してきましたが、伊吹山はその特殊な自然環境から、植物の通り道になってきました。それで現在の伊吹山には、他の山ではみられないほど種類の多い花が咲き誇っているわけです。
 ・キンバイソウ(※西南限=滋賀県危機増大種) ・マルバダケブキ(滋賀県分布上重要種=伊吹以北と岡山・高知の一部に隔離分布) ・コキンバイ(中部以北・高山とは限らない) ・サンカヨウ(滋賀県分布上重要種=北アメリカと東アジアに分布・北・中部以北) 他には、エゾフウロ、ハクサンフウロ(※西南限)ニッコウキスゲ(京都府の芦生が西南限)イブキトラノオ(滋賀重要=北本四九)・キオン(北本四九)ノビネチドリ(北・中部以北)・メタカラコウ(本四九)

【日本海多雪型】
 風の通り道になる伊吹山は冬は、日本海上空で水分をたっぷり含んだ大陸からの風が北側の斜面にぶつかって、たくさんの雪を降らせます。そんな環境が好きな植物として、伊吹山には、ハクサンカメバヒキオコシ(中部地方北西部※)、イブキトリカブト(近畿)、スミレサイシン(北・本南部)、ミヤマイラクサ(北本四九)など多くあります。(ほかに ハイイヌガヤ・オオカニコウモリなど)

【太平洋型】
 太平洋側にも近い位置にあるため、南方系・太平洋側の植物も多いのが特徴です。
・ギンバイソウ(関東以西 四九)・マネキグサ(絶滅危惧種II類(VU)・滋賀県希少種=神奈川以西 四九)・ツクバキンモンソウ(本太平洋側 四)・シロガネソウ(ツルシロガネソウ滋賀県分布上重要種=神奈川〜奈良)・エンシュウツリフネソウ(絶滅危惧種II類(VU)・静岡・愛知・長野と九州北部)・ヒナノキンチャク(絶滅危惧種IB類)・セツブンソウ(関東中部)ほかにジンジソウ(関東以西 四九)・ナガバノスミレサイシン(本四九の太平洋側)など
 ヒナノキンチャク 7都県(東京神奈川山梨岐阜山口愛媛高知)で生息。花2mm・果実3mm
(特別)チチブリンドウは、絶滅危惧種IA類(CR)=「絶滅の危機に瀕している種」 群馬・埼玉の2県でのみ生息確認 埼玉で生息不明。伊吹山は、1996年上野達也氏によって発見された。