2008年度 伊吹山外来植物侵入追跡調査
作成:筒井杏正


2008年度 伊吹山外来植物侵入追跡調査
 環境省が公園計画の変更を検討している伊吹山は、石灰岩からなる滋賀県の最高峰で、夏を中心にたくさんの利用者が訪れる。同地には約1300種の植物が生育し、特別保護地区に指定されている山頂部のお花畑ではルリトラノオやコイブキアザミなど9種類の固有種が見られ、国の天然記念物にも指定されている。一方、それらの場所で、1) 利用者による踏みつけ、2) 植生が移り変わる「植生遷移」の進行、3) 外来植物の侵入による植生の劣化や自然景観への影響が生じて、大きな問題になっている。
 こうした状況を踏まえて伊吹山ネイチャーネットワークは、平成20(2008)年、伊吹山に侵入する外来植物の追跡調査を実施した。外来植物の侵入は、場所、時期を問わずゲリラ的に発生することが多く、その確かな侵入実態を知るため網羅的な調査を随時実施した。

 <平成20(2008)年 外来植物追跡調査概要>
 1.調査対象
  全ての外来植物。ただし、ここでは、環境省が外来生物法にて示す「要注意外来植物※1」を中心としたものを掲載した。また、これらにあげられなくとも、最近になって問題視されている外来植物も取りあげた。しかし、 常在するが生態系等に影響が少なく、すでに回りの環境と共生していると思われる外来植物は、掲載していない。例えば、中世薬草園の名残と伝えられるイブキノエンドウ、キバナノレンリソウ、イブキカモジグサ。また、オランダミミナグサ、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ等は除外した。
 伊吹山の帰化植物の分布状況については、1977年「伊吹山帰化植物目録」が記録され、13科46種類をあげている。
以後30年以上経った今回の調査では、上記除外した外来種を加えず14科36種を数えた。このうち、伊吹山ドライブウェイ沿道には、13科31種が生育し、伊吹山南麓・登山道側には、9科19種が生育していた。
 しかし、この調査では、時節等による見落としもあり、今後、続けて毎年の調査を実施して行く方針である。
 2.調査実施日 2008(H20)年
   1. 伊吹山ドライブウェイ沿道(交差点~8合目駐車場)
     1回=2008.09.14、  2回=2008.09.20、   3回=2008.09.28  4回=2008.10.11、  5回=2008.11.09
   2. 登山道(山麓登山口~山頂)   調査実施日
     1回=08.05.25、    2回=08.09.27
 3.調査区
   1. 伊吹山ドライブウェイ沿道(交差点~8合目駐車場)
     伊吹山ドライブウェイ入口交差点(信号)から8合目駐車場までの待避所を中心とした35地点。
   2. 登山道(山麓登山口~山頂)
     1合目から9合目の10区間。※山麓登山口から1合目は未調査
 4.調査方法
   1. 調査区の面積
    ・伊吹山ドライブウェイ沿道=待避所を中心に実施。それぞれの待避所の全面積を調査区域とした。
    ・登山道側(南斜面)=(道幅の中心を基軸に左右2mの範囲)×(1合目毎の区間)(1〜9合目)
   2. 被度・群度=被度・群度の階級の表し方であるBraun Blanquetなどの植物社会学的な方法を参考に、
     次の数値で表した。
     (被度)
      5=調査面積の3/4〜4/4 を占める。個体数は任意。
      4=調査面積の2/4〜3/4 を占める。個体数は任意。
      3=調査面積の1/4〜2/4 を占める。個体数は任意。
      2=調査面積の1/10〜1/4 を占める。あるいは個体数が多い。
      1=調査面積内の1/20〜1/10 を占めるが個体数は少ない。あるいは個体数は多いが、被覆面積率1/20 以下。
    (群度)
      5=調査面積内に一面に生育する。
      4=一面に生育するが、あちこちに穴が入る。または大きな斑紋状。
      3=小さな斑紋状。
      2=小群状
      1=単生


※今回、2008年(5月〜11月)の調査データを基に分かりやすくグラフにしてまとめましたので以下に提示します。

 <2008(H20)調査>
 1. 伊吹山外来植物侵入追跡調査(1)
   伊吹山ドライブウェイ沿道データ 【PDF】 【HTML】
 2. 伊吹山外来植物侵入追跡調査(2) 
   山頂部(西回りコース、東回りコース、中央コース、山頂部)データ【PDF】
 3. 伊吹山外来植物侵入追跡調査(3) 
   登山道コース(山麓〜山頂)データ【PDF】  【HTML】
 4. 伊吹山外来植物侵入一覧表
   外来生物法 要注意外来植物 伊吹山侵入 一覧表


2008(H20)〜2011(H23)年事業
伊吹山の自然再生に向け琵琶湖国定公園の計画変更へ 外来生物対策など強化
規制の背景
国定公園は、自然公園法に基づき、国立公園に準ずる優れた自然の風景地として都道府県の申出により環境大臣が指定するもので、現在55カ所ある。わが国で最初に指定された国定公園のひとつである琵琶湖国定公園は、日本最大の湖である琵琶湖を中心として、その周囲の山々や瀬田川(宇治川)の一帯からなる。同公園では近年、公園利用者による自然破壊や、外来生物による植生の劣化などが見受けられ、問題になっている。このため環境省は、同公園に関する公園計画を変更することにした。

ポイント
環境省が公園計画の変更を検討している伊吹山は、石灰岩からなる滋賀県の最高峰で、夏を中心にたくさんの利用者が訪れる。同地には約1300種の植物が生育し、特別保護地区に指定されている山頂部のお花畑ではルリトラノオやコイブキアザミなど9種類の固有種が見られ、国の天然記念物にも指定されている。一方で、それらの場所で、1) 利用者による踏みつけや、2) 植生が移り変わる「植生遷移」の進行、3) 外来植物の侵入による植生の劣化や自然景観への影響が生じて、大きな問題になっている。

こうした状況を踏まえて同省は、公園計画を変更して滋賀県の伊吹山に自然再生を行うための保護施設である「自然再生施設」を追加する方針だ。また、自然再生事業については、伊吹山に関わる保全活動団体や学識経験者、地域住民、企業、行政機関などで構成する「伊吹山自然再生協議会」を設置し、その同協議会が作る「伊吹山再生全体構想」に基づいて実施するとしている。さらに、自然再生事業の具体的な内容として、次のものを検討している。

1) 利用者の踏みつけなどによる被害対策として、立入禁止看板や進入防止柵などを設置
2) 植生遷移対策として、アカソやススキなど適正な規模以上に拡大した植物の刈り取りを実施
3) 外来植物対策として、セイヨウタンポポやヒメジョオンなどの除草を実施

同省では、これらの対策を実施することにより、劣化しつつある伊吹山の生態系の保全、再生が図れると期待している。

<>(提供/洛思社[環境部ドットコム])

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